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第5回 コーランを聴く・読む その一 基礎知識 Q & A

      専門家による解説 コーランの構成や内容の紹介

 

日 時 : 平成26年10月26日(日)16時~17時半

会 場 : 神戸ハラール製品啓発センター事務所(JR住吉駅前)

 

コーランについて

 

イスラームにとってコーランとは何ですか?

コーランは、イスラームの根本聖典で、ムスリム(イスラム教徒)の生活を、心的・物的両面において規定します。他に旧約聖書のモーセ五書、詩篇、新約聖書の福音書も聖典として扱われますが、最後にもたらされ、神の言葉そのものであるとされるコーランが、最重要視されています。

 

『コーラン』という言葉の意味は何ですか?

正確にはアラビア語で「アル=クルアーン」といいます。「アル」は定冠詞で、「クルアーン」には「声に出して読むもの・こと」という意味があります。したがって、本来黙読するものではなく、読誦するべきものです。

 

コーランはどのようにしてできたのですか?

西暦610年、ヒラー山洞窟にいたムハンマドに、大天使ジブリール(カブリエル)を通じてアッラーの啓示が下され、それはムハンマドが死ぬ632年まで続いたとされます。この間に下された啓示を集めたものがコーランです。

 

誰が、いつそれを成文化したのですか?

ムハンマドの秘書を務めたザイド・イブン=サービトが、アブー=バクルが初代カリフであった時期(632~634)に、第1回の編纂を行いました。その後写本の間に読み方の違いが出たため、第3代カリフ、ウスマーンの時代に再びザイドを中心として、人々の記憶からだけではなく、様々なものに書き留められていた啓示を編纂し、現在の形になりました。

 

何語で書かれているのですか?

コーランはアラビア語で神が下した啓示を一字一句忠実に記録したものと信じられています。ですから、それを翻訳したものは厳密にはコーランとは言い得ません。コーランの文体は、散文詩の形式で脚韻を踏んでおり、その韻律による響きの美しさは、神の奇跡であるとされます。

 

コーランの量はどのくらいですか?

文字数は約78000語から成り、ほぼ新約聖書と同じ分量です。(日本の文芸書と同じサイズで印刷すれば500ページほど)114の章(スーラ)があり、各章がさらに節(アーヤ)に分かれています。章を並べる順番は、ほぼ長い順になっており、年代順ではありません。

 

どのようなことが書いてあるのですか?

コーランの内容は、メッカ期とメディナ期に分けられると考えられています。メッカ期(つまりヒジュラ以前)は、警告的で文が短く、メディナ期は、共同体(ウンマ)を指導するための啓示で長い章になっています。

結婚や離婚、相続に関する規定、飲食を含む生活規範、犯罪に対する処罰規定など、生活上のきまりが事細かに記されています。とはいえ、現世は永続しない、現世的価値は虚しい、来世の永遠の生こそが重要だ、とも述べられており、来世志向性も明らかです。

イスラームの世界観

 

イスラームの根本となっている考えとは何ですか?

一言で説明するのは難しいですが、イスラームの根本には「タウヒード」による世界観があると考えられます。

タウヒードとは「神の唯一性」を意味し、一般にムスリムは「アッラー以外に神はなし」と信仰告白して、この信仰の根本を表明します。タウヒードとは単に八百万(やおよろず)の多神崇拝を排することを指すだけではなく、人や宇宙を含む世界のすべてが絶対神アッラーによって創造され、現在においても創造されつづけており、そしていつの日か終末の時を迎える、という実存の時間と空間の原理なのです。ですから、人の運命もアッラーの予定のうちにあるとされ、この神の予定(カダル)を信じることも、ムスリムが信ずるべき6項目(六信)の一つに入ります。

 

時間は終末に向かって一方向に進むとありますが、終末がくると世界はどうなってしまうというのですか?

終末をしらせる音が鳴り響き、天変地異が起こる、そして死者は墓から甦り、すべての人間が集められて、アッラーにより最後の審判にかけられることになっています。そこで、現世での生き方を裁かれて(生きている間の善行と悪行が秤にかけられて)、来世において天国へ行くか、地獄へ行くかが決定されるということです。この来世というのもイスラームの六信の一つです。

天国は「楽園」として、豊かに茂る植物やオアシスのイメージで示される一方、地獄(ジャハンナム)は、灼熱のイメージで示され、永遠の苦しみを味わうとされています。

 

どうすれば天国に行けると考えているのですか?

アッラーは信仰の必然性の根拠や目的を示し、信仰者としていかに生きるべきかを教えており、信仰することで来世での救済が約束されることになっています。それは啓示として天使を仲介し、預言者に伝えてある、そしてムスリムはその啓典から神の指示を知ることができる、というわけです。

天使、啓典、預言者を信じることは、神アッラー、神の予定(カダル)、来世を信じることとあわせて、イスラームの六信による救済観を形成しています。

 

ムスリムはその6項目を信じてさえいればよい、いうことですか?

いいえ、信じるだけではなく行動することも大切だと考えられます。 神の意志により現世が存続する限り、啓示に従い、現世の秩序を維持すべく、行ないを正さなくてはいけません。一般にムスリムが義務としてなすべき行為5項目を五行といいます。信仰告白、礼拝、喜捨、巡礼、斎戒(断食)がこれにあたります。

 

信仰告白とはどのように行なうのですか?

ムスリムは「アッラーのほかに神はなし、ムハンマドは神の使徒なり」という意味のアラビア語を口に出して言うべきだとされます。入信を示す時や礼拝などで繰り返し唱えています。

 

礼拝はどのように行なうのですか?

原則として、1日に5回メッカの方向を向いて一定の所作を行なうことになっています。 礼拝の所作は、神を敬う姿を示しているともいわれます。日々の礼拝は各自で行ないますが、金曜日の昼は集団礼拝をします。この集団礼拝のために立てられているのがモスク(アラビア語ではマスジド)というわけです。

 

コーランは黙読するものではなく、イスラム諸都市で一日5回モスクから流される祈りを聴くように、心身全体で読誦することで、アッラーへの絶対的帰依を確認することです。

モスクから毎日5回放送される「アッザーンの召集宣言」の録音を下記のアドレスにリンクして聴いて下さい。

http://www.islamweb.cz/audio/adhan/Syrie.mp3    (シリアのモスク 約3分)

http://www.islamweb.cz/audio/adhan/Egypt.mp3  (エジプトのモスク 約3分)

 

アッラーフ・アクバル

「アッラーは偉大なり」(4 回/2 回)

アシュハド・アン・ラー・イラーハ・イッラッラー

「アッラーの他に神は無しと私は証言する」(2 回)

アシュハド・アンナ・ムハンマダン・ラスールッラー

「ムハンマドは神の使徒なりと私は証言する」(2 回)

ハイヤー・アラッサラー

「いざや礼拝へ来たれ」(2 回)

ハイヤー・アラルファラー

「いざや成功(救済)のため来たれ」(2 回)

 

喜捨とはなんですか?

自分の財産の一部をイスラーム共同体のために差し出すことです。これは原則として共同体の中の困窮者を救うために使われることになっています。貧しい人は(当然のことながら)喜捨は免除されます。

イスラームにおける貧者救済は、キリスト教でいうような慈善事業ではなく、義務なのです。義務であるゆえに、喜捨のお金は為政者が税金のようにあつめるようになりました。

 

巡礼とはいつ、どのように行なうのですか?

イスラーム暦の巡礼(ズ・ル=ヒッジャ)月にメッカのカァバ神殿とその近郊を規則に従ってめぐります。

 

 

メッカのカァバ神殿をめぐる巡礼者たち

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斎戒とはなんですか?

イスラームでいう斎戒(サウム)とは、イスラーム暦のラマダーン月に、欲望をコントロールすべく、日中は断食をし、性的な行為も抑制することです。

 

ムスリムのなすべき行為は、この五行でおわり、ということですか?

いいえ、ムスリムはすべての行為(手を洗うことから経済・政治的政策まで)を、神の意志に沿うべく行なうべきだとされます。そこで、啓示をいっそう詳細に具体的に展開したイスラーム法(シャリーア)が大切になってくるのです。

 

コーランの朗読サイト:

https://www.youtube.com/watch?v=Smqa-9YWrW4

 

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